八番街の路地を曲がれば
見えるだろ 赤い扉が
彼女がかつて 歌ってたのさ
陽が沈めば ショーの時間
安い香水 趣味の悪いドレス
似合いの古びたステージ
「歌えればいい それだけでいい」
化粧落とし彼女は言った
札束受け取り 慌てるオーナー
買えないモノなど何も無い
こうして僕は 愚かな僕は
彼女から歌を奪った
流行りの服で 高価な宝石で
愛おしい君を飾ろう
あんな酒場で 歌うことはない
金ならある 腐るほどにね
歌っておくれ 僕のために
愛しいカナリアの君よ
どうしてそんな 眼で僕を見る
何が欲しい全てあげるよ
窓から見える街の灯りを
全部買い取ってみせようか?
誰もが僕を 置いて消えてく
君だけは逃がさない
彼女は何も歌わなくなって
何も口にしなくなって
虚ろな瞳 僕の愛した
母親と同じ瞳
この世は金さ 金さえあれば
何でも買える 君も買える
「...どうして泣くの?」蔑むような
君の笑顔 疎ましい
愛していると ささやきながら
やせ細った君を抱いて
そして静かに 火を放とう
この胸の地獄 見せよう
けれど僕は 一人残されたまま