ぜいぜい荒い呼吸をしながら峠を登り
登りきってほっとした時
突然目の前に一体の山賊が踊り出た
待て何をするのだ
私は日の沈まぬうちに王城へ行かなければならぬ
離せ
どっこい離さぬ
持ち物全部を置いていけ
私には命のほかには何もない
そのたった一つの命もこれから王にくれてやるのだ
その命が欲しいのだ
さては王の命令で
ここで渡る
私を待ち伏せしていたのだな
山賊たちは物も言わず一斉に梱包を振り上げた
メロスはひょいっと体を折り曲げ
飛鳥のごとく身近の一人に襲いかかり
その梱包を奪い取って
気の毒だが正義のためだ
と猛然一撃
たちまち三人を殴り倒し
残るもののひるむ隙に
さっさと走って行くのだ
そして峠を下った