ラッシュは我が疲れを
吐き出してる
人の多さまでがもの珍しげに見えて
東京駅地下道の人混みの中
ああ一群れの制服の娘たちがいる
真新しいスーツケースを下げて
集団就職で今着いたらしい
妙に腰の低い男が先頭に立って
ああ何とか会社の旗など振り回している
家を出る前の晩は赤飯などを食べて
家族揃って泣き笑いしたのかいい
あと心だけはまだ田舎の家におき それでも家を出てくる魅力に負けて
どうですか東京ってやつに会ってみて
どうですか東京ってやつのご挨拶の仕方は
みんな押し黙ったままのこの人混みは そうこれが都会ってやつのご挨拶の仕方なんだよ
始めから都会に出ていかなければ
いつまでも都会でなくて済んだのに
綺麗に暮らしてゆけるところは
どこか他のところのような気もするよ
今はまだ驚いていることだけで済むけれど
わかるさ驚かなくて済むさ
駆け引きのうまい男ばかり出世して
綺麗な腹の男はもう拗ねてしまってる
これから君は日曜日だけを待つんだね
悲しみの歌がなぜ街に流れるかもわかってきて
使うのに容易く稼ぐのに辛い
ああそんな給料の苦さも知ってしまうんだろうね
今度君がふるさとに帰って行くまでには
親に語れない秘密の一つや二つは
できてしまって嘘もついてしまうんだね
騙された男のことはきっと話さないだろうね
僕はこれから大阪へ行くところ
一番綺麗だった女の子の顔など思い出し
制服が人ごみの中に消えていくのを
振り返りながら僕は見送っている
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